香川県東かがわ市には、児童の体験機会の拡充や学びを目的とした独自のプログラム「土曜日授業」があります。市内すべての小学校を対象に、年間10回程度実施されるもので、今年度、ぐんだらけは引田小学校3年生の土曜日授業を担当することになりました。
このレポートでは、その第1回目の様子をお伝えします。
前章 草木染めとの出会い
第1回目の土曜日授業は、草木染めという手法を使って布を染め、ぐんだら家の入り口に手作りの暖簾を作ろうというものでした。
草木染めとは、植物の根、茎、葉、花、果実などから色素を煮出して、布や糸を自然の色で染める技法です。
1回目の授業は、まずはぐんだら家という場所を知り、少しでも愛着を持ってもらいたいというのが目標でした。そこで、ぐんだら家に今後長く飾れるような子どもたちとの作品を作りたい、さらにそれが実用的なものでちゃんと家の一部として使われるようなものがいいと考えました。
ぐんだら家は通りに面してガラス戸になっており、昼でも夜でも外から中が丸見え状態なのが気になっていました。さらにぐんだら家には広い庭があり、ちょうどその時期雑草がぼうぼうに生えていたこともあり、ぐんだら家に生えている草木を使って子どもたちと染め物ができたら楽しいのでは?そしてその布でカーテンや暖簾が作れたらもっといいのでは?ということを思いついたのでした。
思いついたらすぐ行動。草木染めの基本的なやり方を調べ、一緒に土曜日授業を行う教員や、たまたまその場に居合わせた人も巻き込み、東京にある藝大部屋という拠点で実験をしました。草木染め素人の我々はひとまず近所を散歩し、材料となる草や枝を拾い集め、種類ごとに分けて、鍋に入れ煮てみました。
「本当に色が出るのだろうか…」と半信半疑ではじめてみたものの、草木の種類によって毎回絶妙に違う色の抽出液が煮出され、鍋の蓋をあけるたびに歓声が上がり、液に布を浸して色を染み込ませては「いい色!」と大盛り上がり。
気がつけば用意していた布だけでは足りなくなり、その場にある染めて良さそうな布を物色してはあれもこれもと一日中染め続けたのでした。
名人との出会い
草木染めの準備は万端。いざ、引田へ!と意気込んでいた出発数日前。先に現地入りした教員から一本の電話がかかってきます。
「引田に来て、近所の人と草木染めの話をしていたら、こちらに草木染めの名人がいるので紹介してもらえることになった」という内容でした。
なんと、そんな人が!それならぜひということになり出会ったのが、Jさんでした。Jさんに我々の計画を相談すると、授業でたくさんの子どもが一度に染めるために必要な器具一式を貸してくださることになり、さらには「雑草で染めるのはなかなか難しいよ。よく染まる液を作るために、うちにある玉ねぎの皮を分けてあげる。子どもが喜ぶような、鮮やかな黄色になるよ。」と大量の玉ねぎの皮も譲ってくださいました。
また、模様を出すための絞りに関しても、幾何学的に模様を作る絞り方や、綺麗に模様を出すコツなどレクチャーしてくださり、
ここまできたら…と恐る恐る「もし良ければ授業当日もぐんだら家に来て、子供達の手伝いをしてくださいませんか?」とお願いしたところ、快諾してくださり、ぐんだら家草木染め計画は現地の名人との出会いでより本格的なものになっていったのです。
子供たちとの出会い
6月6日。第1回目の土曜日授業。
午前9時。まずは小学校まで子ども達を迎えにいき、ぐんだら家まで、先頭の方にいた女児数人とおしゃべりしながら歩きます。最近流行っているものは?と聞くと、シール交換とTikTokのダンスだと教えてくれました。人懐っこく、人の目をしっかり見て話せるなぁというのが第一印象でした。
ぐんだら家に到着し、場所の紹介と教員たちの自己紹介。そして今日のスペシャルゲストのJさんも紹介します。
授業に使える時間は約60分。草木染めの全工程を時間内に収めることは難しく、また安全面なども考慮し、染めるための液だけは事前に作っておき、子ども達には布を絞って模様をつけることと、染色を担当してもらうことにしました。
想像を膨らませながらの絞り。これは性格がでて面白いです。
頭の中に模様を描いてその通りになるよう慎重に慎重に絞る子。
手が動くままにパパパっと絞り、5分くらいで「できた!」と持ってくる子。
周りの様子を見ながら、真似してみたり自分流に改変してみたりしながら進める子。
絞り終えた子から順にグループに分かれて、温めておいた染色液に布を浸します。
「あったかーい!お風呂!」「あつー!!」「変な匂い!」「え、いい匂いでしょ!玉ねぎスープの匂い!」大騒ぎです。
色が染み込んだ布を持って庭に。そこでは、布に色を定着・発色させるための「媒染」という工程を行います。
最後に媒染したものを水洗いすると、いよいよ絞り目をほどいて、どんな模様になったかお披露目です。
バタバタで時間内に授業を終え、みんなでJさんにお礼を言い、染めてくれた布は、このあとご近所の強力な助っ人の方たちが大きな暖簾に縫ってくれることを伝えました。
そして最後に子どもたちにはひとつだけお願いを。
ぐんだら家にいるスタッフやアーティストのことは、「先生」ではなく名前で呼んで欲しいこと。それは私たちは「先生」ではない大人としてあなたたちと関わってみたいから、ということを話して解散となりました。
その日の午後、近くに住む方が噂を聞きつけて、子供たちの作品を見にきてくれました。
「きれいやなぁ。なんぼでもみてられるわ」と言いながら、いつまでも風に揺れる布を眺めていました。
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